積水ハウス 決算発表 株価は回復へ

2017/03/10  日本経済新聞 朝刊  19ページ  1039文字  書誌情報
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 積水ハウスは9日、2018年1月期の連結純利益が前期比5%増の1280億円と、2期連続の最高益になると発表した。国内は賃貸アパートが堅調だが、今後は人口減少の影響が避けられない。成長の活路を見いだそうとしているのは海外だ。現地のパートナーと組み、エネルギー消費の少ない日本流の住宅を定着させようとしている。
 17年1月期の純利益は前の期比45%増の1218億円。9日の記者会見で阿部俊則社長は「中高級路線を目指したことが良い形になった」と述べた。国内で賃貸アパートが好調で建設請負の受注残高は1月末時点で1年前より6%多い。管理を受託する物件はほぼ満室で目先の環境は良好だ。
 ただ市場ではアパートの供給過剰と、好立地を巡る競争激化を気にする声が増えてきた。人口が減り続ける国内市場にとどまらず、積ハウスが成長の柱に据えるのが海外事業だ。前期は海外事業の営業損益が251億円の黒字と前の期の56億円の赤字から改善した。現地では後発だけに不利な条件に苦しんだが、連結営業利益の1割強の規模に育ちつつある。
 積ハウスは米、オーストラリア、中国各地でマンションを販売するほか、米国では宅地造成や賃貸住宅、オーストラリアでは現地パートナーと組んで戸建て住宅を展開している。18年1月期の営業利益は前期比4%増の1920億円の見通し。増額分のうち、6割を海外で稼ぐ計画だ。
 「強気」の背景には、現地で住宅機能の高さが評価され始めたという事情があるようだ。ドアなどの密閉性が高く、断熱性の良い建材を使うので消費電力を抑えられる。価格は現地メーカーより1割以上高いが富裕層の引き合いが強いという。
 同日発表した計画では20年1月期の営業利益目標2300億円のうち、海外分は550億円と2割強を占める。今期見通し比で8割増を目指している。2月には米西部の中堅住宅会社を533億円で買収。トランプ政権の景気刺激策で住宅建設が増えると読み、販路を確保する。
 もっとも、不慣れな海外事業のリスクを株式市場は警戒している。9日終値は1882円で、16年1月に付けた昨年来高値(2067円)から1割安の水準にある。海外の大型開発や分譲用の土地取得では、提携先の現地企業とより緊密な連携が必要になる。野村証券の福島大輔シニアアナリストは「中国の不動産市場はまだ楽観視できない。米国の買収先をうまく運営できるかどうかだ」と指摘している。
【図・写真】積水ハウスはオーストラリアのシドニー市でも宅地を開発している